執筆者:ワンビ株式会社 代表取締役 加藤 貴
2026年、OneBe(ワンビ)は創業から20周年を迎えます。
この事実を意識しながら2025年を振り返ると、この一年が単なる通過点ではなく、次の10年を定義するための重要な助走期間だったことが、はっきりと見えてきます。
2006年に創業し、20年という時間は、IT・セキュリティ業界では決して短くありません。
技術トレンドは目まぐるしく変わり、昨日の常識が今日には通用しなくなる。そんな世界でOneBeが20年近く一貫して向き合ってきたテーマは、驚くほどシンプルです。
「データを、最後まで守ること。」
2025年は、その思想がようやく“個別の技術”を超え、社会の仕組みとして接続され始めた一年でした。
1. 2025年を迎える前のOneBe ― 積み重ねてきた20年の延長線
OneBeは、創業以来「遠隔データ消去」という分野に特化してきました。
それは派手でも、分かりやすくもない領域です。しかし、ノートPCやモバイル端末が業務の中心になるにつれ、「消せること」の重要性は静かに、確実に増してきました。
紛失・盗難・退職・災害。
どんなに厳格な運用ルールを敷いても、人とデバイスが関わる以上、事故はゼロにはなりません。OneBeはその現実から目を背けず、
「起きてはいけない」ではなく「起きても守れる」
という設計思想を磨き続けてきました。真のゼロトラストを目指してきました。
2024年までのOneBeは、この分野で確かな信頼を獲得していました。一方で、課題も明確でした。それは、価値は高いが、単独ではスケールしにくいという点です。
この課題を真正面から解決する選択が、2025年1月の決断につながります。
2. 2025年1月 ― アイキューブドシステムズとの資本提携
2025年1月、OneBeは株式会社アイキューブドシステムズとの資本提携を発表しました。
公開買付け(TOB)を通じて、アイキューブドシステムズが親会社となり、OneBeはグループの一員として新たなフェーズに入りました。
この提携の本質は、「規模」ではありません。
思想の接続です。
アイキューブドシステムズはMDM(モバイルデバイス管理)の分野で実績を持ち、「管理」を軸に価値を提供してきました。
OneBeは、「最後に消す」という極めて専門的な領域を深掘りしてきた会社です。
管理と消去。
これまで別々に語られてきたこの二つが、経営レベルで統合されたことは、日本のデバイスセキュリティにとっても大きな意味を持ちます。
2025年は、ここから動き始めました。
3. 共創は、組織の会話から始まった
資本提携後、最初に変わったのはプロダクトでも組織図でもありません。
「問いの立て方」でした。
- この機能は、誰の不安を減らすのか
- 現場で本当に使われる設計か
- 事故が起きた“その瞬間”に何ができるか
OneBeとアイキューブドシステムズのメンバーが、同じ問いを共有し始めたことで、議論は自然と未来志向に変わっていきました。専門性の高さは維持したまま、
「自分の守備範囲を守る」から「つなぐ」発想へ。
2025年は、共創が言葉ではなく行動として現れ始めた年でした。
4. 5月 ― パートナー会が示したOneBeの立ち位置
2025年5月、OneBeとアイキューブドシステムズは共催でパートナー会を開催しました。
この場は、製品紹介のためだけのイベントではありません。
ゲストとして迎えたのは、サイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野慶久氏。
組織、信頼、働き方、そしてテクノロジーの役割について、示唆に富んだ対話が交わされました。特に印象的だったのは、
「完璧なルールより、回復できる仕組みが重要だ」
という考え方です。
これは、OneBeが20年近く取り組んできた遠隔データ消去の思想と、驚くほど重なります。
事故は起きる。だからこそ、被害を最小化する設計が必要だ。
このパートナー会を通じて、OneBeは改めて自らの立ち位置を確認しました。
それは、セキュリティを“制約”ではなく“前提条件”として設計する会社だということです。
5. 自治体・法執行機関での広がり
2025年、OneBeが特に力を入れた分野の一つが、自治体および法執行機関での導入拡大です。
これらの組織では、
- 大量の個人情報を扱う
- 端末の持ち出しが避けられない
- 一度の事故が社会的信頼を大きく損なう
という厳しい条件があります。
OneBeのリモートワイプは、「事故を防ぐ魔法」ではありません。
しかし、事故が起きても社会的損失を最小限に抑える設計として評価され、導入が進みました。 これは、セキュリティを精神論ではなく、仕組みとして実装してきたOneBeの20年の積み重ねが、公共領域で認められた証でもあります。
6. 電源OFFからのリモートワイプ ― 現実主義の到達点
この20年間の活動の中で日本のPCハードウェアメーカーとの連携による「電源OFF状態からのリモートワイプ」が大きな功績です。この取り組みは、技術的にも調整的にも簡単ではありません。OSより下のレイヤーでセキュリティを成立させる必要があるからです。
しかし、日本の技術者同士で実現させることができました。
利用者から手の離れたPC端末は、
- 必ずしもオンラインではない
- 電源は切られるかもしれない
- 盗難者が協力してくれることはない
だからこそ、最悪の前提で設計する。
7. 2025年を終えて見えたOneBeの姿
2025年を通じて、OneBeの姿はより輪郭を持ちました。
- 単体製品ではなく、エコシステムで価値を出す会社
- 事故が起きないことを祈るのではなく、起きた後を設計する会社
- 表に出ないが、社会の安心を支える会社
これは20年かけて築かれたポジションであり、一朝一夕に真似できるものではありません。
8. 2026年へ ― 20周年は、次の始まり
2026年1月、OneBe代表の加藤は、アイキューブドシステムズのCMO(Chief Marketing Officer)に就任します。
これは、OneBeの思想をグループ全体、そして社会へ広げる役割です。
そして2026年、OneBeは創業20周年を迎えます。
20周年はゴールではありません。
むしろ、次の10年をどう設計するかを問われる年です。
- 自治体・法執行機関での標準化
- ハードウェアと一体化したセキュリティ
- 「消せること」が当たり前のデバイス文化
2025年に現実となった共創は、2026年に社会実装のフェーズへ進みます。
結びに代えて
セキュリティは、主役にならない仕事です。しかし、主役が安心して舞台に立つためには欠かせない存在です。OneBeは「ベストオブブリード (Best of Breed)」を20年間、その役割を愚直に果たしてきました。2025年は、その積み重ねが次の時代につながった一年でした。
そして2026年。
OneBeは20周年という節目を迎えながら、静かに、しかし確実に次の10年へ踏み出します。未来は、偶然ではなく設計の結果として訪れます。
OneBeは、その未来を続けて社会のデータを守っていきます。
