Windows の位置情報とは?
位置情報とは、現在の場所を特定するためのデータのことです。
パソコンやスマートフォンでは、さまざまな機能を利用するために「位置情報」が使われます。
今回焦点を当てるWindows 11 パソコンでは、位置情報をオン(有効)とオフ(無効)にすることのメリット・デメリットを詳しくご紹介していきます。(Windows 10も基本的には同様ですので、Windows 10ご利用の方も参考にしてみてください)

Windowsの位置情報の取得方法
Windows PCやスマートフォンでは、さまざまな技術を組み合わせて位置情報を取得しています。
現在位置を特定する行為は測位と呼ばれます。
Windowsの位置情報を測位する方法は幾つか存在します。
1. GPS(全地球測位システム)
GPS(Global Positioning System)は、人工衛星を利用して現在地を測定する方式です。
高精度な位置測定が可能であり、特に屋外での利用に適しています。
一方で、屋内や地下では人工衛星の電波が届きにくいため、測位が難しくなることがあります。
スマートフォンや一部のノートPCに搭載されており、地図アプリやナビゲーション機能で活用されることが一般的です。
2. Wi-Fiアクセスポイントを利用した測位
Wi-Fiアクセスポイントの情報を活用して位置を特定する方法です。
近くのWi-Fiネットワークの情報をデータベースと照合することで、おおよその位置を割り出します。
GPSが利用しにくい屋内や都市部でも、比較的正確な測位が可能です。
カフェやショッピングモールなど、公共のWi-Fi環境が整った場所では特に有効です。
3. 携帯キャリアのネットワーク(基地局測位)
携帯電話の通信を提供する基地局の位置情報を利用して、端末の現在地を推定する方式です。
スマートフォンが接続している携帯キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンクなど)の基地局の位置をもとに、おおよその場所を特定します。
田舎など基地局の数が少ないエリアでは測位の精度が低くなるものの、都市部では比較的正確な測位が可能です。
GPSのように電波の受信状況に左右されることが少ないため、安定した測位が可能ですが、精度はGPSには及びません。
4. IPアドレスによる位置特定
IPアドレスを基に、大まかな地域(国や都市)を推定する方式です。
インターネットに接続する際のIPアドレスの割り当て情報を利用し、位置を判定します。
固定回線やモバイル回線に関係なく利用可能ですが、誤差が大きく、数キロメートル以上のズレが生じることもあります。
精度は低いため、正確な測位が必要な用途には適していません。
5. Bluetoothビーコンを活用した測位
Bluetoothビーコンとは、店舗や施設に設置されたBluetooth発信機を活用して位置を特定する方法です。
近距離の測位に特化しており、数メートル単位での高精度な位置測定が可能です。
ショッピングモールや空港、イベント会場などで活用され、来場者向けの情報提供やナビゲーションに利用されます。
ただし、広範囲の測位には適しておらず、GPSやWi-Fiと組み合わせて利用されることが一般的です。
このように、位置情報はさまざまな技術を組み合わせて測定され、スマートフォンだけでなくWindows PCでも活用されています。
Windowsでの位置情報の役割
Windows では、位置情報を利用することで、以下のような便利な機能が提供されます。
地図アプリやナビゲーションの利用
Windowsの「マップ」アプリや、GoogleマップなどのWebサービスを使用するときに、現在地を取得することで最適なルートを案内できます。
天気アプリでの地域別情報提供
天気アプリは、現在地に基づいた気象情報を自動的に表示します。位置情報をオフにすると、手動で地域を設定する必要があります。
デバイスの紛失時に役立つ探す機能
Windowsには「デバイスを探す」という機能があり、位置情報を有効にしておくことで、PCを紛失した際におおよその場所を特定できます。
自動時刻設定・タイムゾーンの調整
旅行や出張で異なるタイムゾーンに移動した際、位置情報を利用することで時刻を自動調整できます。
位置情報を活用するアプリの利便性向上
Microsoft StoreのアプリやWebブラウザを利用する際、現在地を基にローカルニュース、近隣のレストラン情報、イベント情報などを最適化できます。
Windowsの位置情報をオンにするメリット
位置情報を有効にすることで、さまざまな便利な機能を活用できます。
地図アプリでの活用
位置情報を有効にすると、Windowsの地図アプリが現在地に基づいた情報を提供してくれます。
Windowsには標準で「マップ」アプリが搭載されており、GoogleマップなどのWebサービスと同様に、現在地を基にしたルート検索や周辺情報の表示が可能です。
- 最寄りのレストランやコンビニなどをすぐに検索できる
- 目的地までの最適なルートを案内してくれる
- 交通状況や所要時間をリアルタイムで確認できる
天気アプリでの活用
Windowsの「天気」アプリやWebブラウザの天気情報は、位置情報をもとに現在地の気象情報を提供します。
- 現在地の天気をリアルタイムで確認できる
- 気温や降水確率、災害情報などを素早く取得可能
紛失時のPCの確認や情報漏洩対策
Windowsには「デバイスを探す」という機能があり、PCを紛失した際に位置情報を利用して端末の現在地を特定できます。
- PCを紛失した際に、マイクロソフトアカウントから位置を確認できる
- 盗難時に、おおよその場所を特定し、適切な対応ができる
ノートパソコンやタブレットPCを外出先で利用することが多い場合、この機能を有効にしておくことで紛失時のリスクを軽減できます。
また、位置情報を活用することで、特定の場所でのみアクセスを許可する設定も可能になります。
企業向けのセキュリティ対策として、リモートワイプという機能で遠隔からデータを消去し、情報漏洩対策をおこなうこともできます。
自動時刻設定やローカルコンテンツの最適化
Windowsでは、位置情報を利用して自動的に時刻を設定したり、地域に適したコンテンツを提供することができます。
自動時刻設定では、旅行や出張などで異なる国や地域に移動した場合、Windowsは位置情報をもとにタイムゾーンを自動調整します。
- 海外や国内移動時に、手動で時刻を調整する必要がない
- 時間のズレを防ぎ、会議やスケジュールの管理がしやすい
Windows の位置情報をオンにするデメリット
位置情報を有効にすると、便利な機能を活用できる一方で、いくつかのデメリットも存在します。
プライバシーリスク(個人情報の漏洩リスク)
位置情報をオンにすると、Windowsやアプリが現在地を取得できるようになります。これにより、利便性が向上する反面、プライバシー上のリスクが発生する可能性があります。
企業やアプリ提供者によるデータ収集
Microsoftやその他のアプリ開発企業が、利用者の位置情報を収集する場合があります。収集したデータを元に、ターゲット広告やマーケティングに活用されることもあります。
不正アクセスによる情報漏洩
セキュリティの脆弱なアプリや不正なプログラムが、位置情報を取得するリスクがあります。サイバー攻撃により、ハッカーが位置情報を悪用する可能性もあります。
第三者に現在地を知られるリスク
位置情報を共有する設定になっていると、知らない間に現在地が他人に伝わることがあります。特定のアプリが、SNSなどを通じて位置情報を共有してしまうケースもありえます。
バッテリー消費への影響(モバイル端末の場合)
Windowsの位置情報機能は、GPSやWi-Fiアクセスポイントの情報を利用して現在地を特定します。そのため、ノートパソコンやタブレットなどのモバイル端末では、位置情報をオンにするとバッテリー消費が増える可能性があります。
プライバシーを守るためにできる対策
- 不要なアプリには位置情報のアクセスを許可しない
- Windowsの「位置情報の履歴」を定期的に削除する
- 位置情報のアクセス履歴を確認し、不審なアプリを削除する
- 公共のWi-Fiを利用する際はVPNを使い、情報漏洩を防ぐ
Windowsの位置情報をオフにするメリット
位置情報をオフにする最大のメリットは、個人の行動履歴が不必要に記録されることを防げることです。
これによりプライバシーに制限を掛けることができることで、位置情報の漏洩リスクなどを防止することができます。
具体的には、位置情報をオフにすることで下記の制限が行う事ができます。
- アプリやWebサイトが勝手に位置情報を取得できなくなる
- 広告やマーケティング目的のデータ収集を制限できる
- 位置情報の漏洩リスクを軽減できる
位置情報がオンになっていると、Microsoftやサードパーティのアプリが利用者の現在地や移動履歴を収集し、それをマーケティングや広告配信に活用することがあります。 オフにすれば、こうしたデータの取得を防ぎ、より安全にWindowsを利用できます。
位置情報のオンとオフは意識をして使い分けましょう。
Windowsの位置情報をオフにするデメリット
Windowsの位置情報をオフにすることで、いくつかのデメリットも存在します。
一部のアプリやサービスの機能が制限されることから、位置情報を中心に利用するアプリでは、現実的にはオフにするデメリットに繋がります。
地図アプリで現在地を取得できない
位置情報をオフにすると、WindowsのマップアプリやGoogleマップなどのサービスで「現在地を取得」できなくなります。ルート検索をする際に、毎回手動で出発地点を入力しなければならなくなるため、不便に感じることがあるでしょう。
天気アプリが自動で現在地の天気を表示しなくなる
位置情報を有効にしていれば、Windowsの天気アプリが現在地の気象情報を自動的に表示します。しかし、オフにすると自分で都市名を入力しないと天気を確認できません。
PCを紛失したときに「デバイスを探す」機能が使えない
Windowsには「デバイスを探す」という機能があり、紛失したPCの位置を追跡できます。しかし、位置情報をオフにしているとこの機能が利用できず、万が一PCを紛失した際に見つけるのが現実的に困難にくなります。
自動時刻設定やタイムゾーン変更ができない
旅行や出張などで異なる地域に移動すると、Windowsは位置情報をもとに自動的にタイムゾーンを変更します。位置情報をオフにすると、手動で時刻を調整する必要があります。
Windowsの位置情報の最適なオン・オフ設定
位置情報をオン・オフにする設定や、特定のアプリに対してのみ位置情報を許可する細かい設定が可能です。プライバシーを守りながら、必要な機能を活用するために、適切な設定を行うことが大切です。
位置情報のオン・オフの切り替え手順
Windowsでは、システム全体の位置情報を簡単にオン・オフできます。
位置情報をオンまたはオフにする手順
- 「設定」を開く([Windowsキー] + [I] を押す)
- 「プライバシーとセキュリティ」を選択(Windows 10では「プライバシー」)
- 「位置情報」をクリック
- 「位置情報サービス」をオンまたはオフにする

アプリごとの位置情報許可の管理方法
Windowsでは、アプリごとに位置情報を許可するかどうかを設定できます。すべてのアプリに位置情報を提供するのではなく、必要なアプリだけに許可することで、プライバシーを守りながら利便性を確保できます。
アプリごとに位置情報を管理する方法
- 「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「位置情報」を開く
- 「アプリが位置情報にアクセスできるようにする」をオンにする
- 各アプリのスイッチを個別にオンまたはオフにする

オンにすべきアプリ
- 地図アプリ(Windowsマップ、Googleマップ など)
- 天気アプリ(Windows天気、Yahoo!天気 など)
- 紛失対策(「デバイスを探す」機能やリモートワイプなど)
オフにすべきアプリ
- ショッピングアプリ(Amazon、楽天 など)
- SNSアプリ(Facebook、X(旧Twitter) など)
- ゲームアプリ(位置情報を使わないもの)
結論:Windowsの位置情報はオン・オフどちらが正解?
Windowsの位置情報をオンにするかオフにするかは、利用目的によって異なります。以下の基準を参考に、自分に合った設定を選びましょう。
位置情報をオンにするべきケース
- 地図やナビ機能を頻繁に使う(Googleマップ、Windowsマップ など)
- 天気アプリで現在地の情報を自動取得したい
- PC紛失時の対策をしたい
- 旅行や出張が多く、自動でタイムゾーンを変更したい
位置情報をオフにするべきケース
- プライバシーを最優先したい
- 位置情報を利用するアプリをあまり使わない
- 広告やマーケティング目的のデータ収集を防ぎたい
- バッテリー消費を少しでも抑えたい
位置情報はなんでもかんでも全てのアプリに提供して良いとは限りません。
信頼性のないアプリや、位置情報を提供する必要のないアプリには、位置情報をオンにして有効にする必要は無いと思います。
ただし、地図アプリや天気アプリなどでは、利用用途が明確であり、オフにすることで利便性が行われる場合もありますので、必要最低限のアプリに対しての位置情報をオンにします。
情報漏洩対策という観点では、PCの紛失時に位置情報が分かると非常に便利であるため、オンにすると良いと思います。
PC紛失時は情報漏洩リスクを防止するという観点から、リモートワイプソリューションによるセキュリティ対策も有効です。 みなさんの最適な位置情報設定を見つけましょう。
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ワンビ株式会社
セキュリティエバンジェリスト 井口 俊介
高等専門学校卒業。大手企業のミッションクリティカルシステムのアカウントサポートを担当。
その後プロジェクトマネージャーにてITインフラの導入に携わる。
2020年からワンビ株式会社でエンドポイントセキュリティのプリセールスとして従事。営業技術支援、セミナー講演、コラムの執筆など幅広くセキュリティ業務に携わる。