SDGs対応が企業価値を高める|IT資産ライフサイクル管理で情シスが果たす役割とは

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勤務する会社が、社会からSDGsへの対応を求められ、或いは、SDGsを標榜した経営を行う中で、情シス部門だけが「我関せず」でいいのでしょうか。

企業には、社会的責任(CSR)があります。SDGsは、そのサブセットです。「責任」という言葉からは、受け身のイメージがついて回りますが、SDGs活動は、企業の社会的信用や競争力、ひいては、企業価値を高めるポジティブなものであり、ステークホルダーからの評価にもつながります。

その論理から、バックオフィス業務といえども、情シス部門もSDGs経営に貢献すべきことは間違いありません。

本記事では、情シス担当者の実務的な指針となるSDGsのポイントを紹介します。

なぜ今、情シスに「SDGs対応」が求められるのか

SDGsの17の目標に対して、情シスは、ともすると、逆行している状況になります。

残念ながら、情報システムの運用には、多くの電力を消費しますし、PC、サーバー、タブレットというデバイス類には、多くの化学物質や貴重な金属が使われています。

この状況を、SDGsの方向に沿うようにするのは、社会的責任であり、ステークホルダーからの要請です。

サプライチェーン全体で高まる環境配慮への圧力

環境省と経済産業省が「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を提示しています。このガイドラインは、企業としての温室効果ガスの排出量計算についてのもので、「サプライチェーンを通じた」という表現にポイントがあります。

事業活動によって、直接、排出する温室効果ガスだけではなく、企業が利用する、電力、物品、サービスが、その企業に届くまでに発生する温室効果ガスをも算定の対象にしているのです。したがって、情報システムのユーザー企業と言えども、利用する電力、機器、ソフトウェアまでもが対象になります。仮に、サプライチェーンの最下流の場合は、それまでの企業の温室効果ガス排出量と自社製品が使用される際の排出量を計算します。また、流れの途中にある場合は、それまでの企業の温室効果ガス排出量と、自社の排出量を次の企業に受け渡すことになります。

このことから、大手企業を中心に、取引先にも環境負荷低減を求める動きが加速しているのが現状であり、対応しない場合には、取引停止というようなリスクがあります。

ESG投資の拡大と企業評価への直結

前述の、温室効果ガスの排出量だけではなく、投資家や金融機関を含むステークホルダーは、企業のESG(Environment、Social、Governance)に注目しており、ITガバナンスや環境への取り組みを評価の基準のひとつであると考えています。

つまり、ITガバナンスの意識の低さや、情報システムの運営による環境への悪影響が、株価や資金調達に影響する可能性があるのです。

「守りのIT」から「社会的責任を果たすIT」への意識変革

情シスとしての、ESGやSDGsへの積極的な取り組みは、「企業価値を創造する部門」という役割を担うことと表現できます。

「守りのIT」「受け身のIT」「コストセンター」から、一歩、踏み出すことができるテーマがESGやSDGsなのです。

IT資産ライフサイクル管理とSDGsの密接な関係

情シスが管理するデバイスや情報システムの運営には、多くの電力を消費します。また、化学物質や金属が多く使われています。これは、冒頭でも、述べた通りです。また、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定」の側面から見ると、上流の会社が作るハードウェアやソフトウェアを利用することは、温室効果ガス排出の責任を引き受けることになります。

ここからは、SDGsの目標(特に、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標12「つくる責任 つかう責任」)と、IT資産管理の関係について考えます。

「調達・利用・廃棄」の各フェーズで貢献できるポイント

IT資産のライフサイクルは、「調達・利用・廃棄」の流れで表現できます。業務システム、ハードウェア、パッケージソフト等、対象によって、多少の表現の違いはあるかもしれませんが、大きくは、全て、この流れだと言えます。

現在の、貴社のこの流れを想像してみてください。SDGsに貢献できる多くのポイントが見つかるはずです。

例えば、PCを調達する場合、「省エネタイプPC」を検討することができます。利用の場面では、社内での「再利用」もテーマになりますし、「環境に優しい廃棄方法」もあります。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換

現在、3Rの時代として、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)が重視され、特に、リユース、リサイクルを前提とした「循環型」モデルへ移行することについては、情シスのミッションであるともいえます。

「⁠資源有効利用促進法⁠」「⁠再資源化事業等高度化法⁠」は、サーキュラーエコノミーを強力に推進するものです。

フェーズ1【調達・導入】:サステナビリティを意識した選定基準         

まず、情報システムに関わる資産の調達や導入に関して、情シスとして、どのようなポイントを、どのような基準で、SDGs、ESG、3Rに貢献すればいいのかを考えます。

環境配慮型製品(グリーン購入)の優先採用

情報システムに関するデバイスを調達する際に、最も有効な方法は、「環境配慮型製品」を優先的に選ぶことです。これは、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)でも定義されており、「環境配慮型製品」の調達について、国は「義務」であり、地方公共団体等は「努力義務」、事業者、国民は「基本的責務」であるとしています。

「環境配慮型製品」の代表的な判断基準には、以下のものがあります。

  • 国際エネルギースタープログラム(経済産業省)
  • エコマーク(公益財団法人日本環境協会)
  • 省エネラベリング制度(経済産業省)
  • PCグリーンラベル(一般社団法人パソコン3R推進協会)

なお、上記以外にも、情報機器メーカーが独自に設定している基準もあります。

キッティング時の梱包材削減と一括導入の工夫

PC等の情報機器を一括で調達する際には、過剰包装を避ける必要があります。これは、自社で行うものではなく、メーカーや代理店等のベンダーに依頼することが必要ですが、これにより、ベンダー自身の環境配慮も可能となります。また、キッティングセンターを活用して一括輸送を行うことで、物流面でのCO2削減が可能です。

フェーズ2【運用・保守】:エネルギー効率の最大化と寿命延伸

次に、情報システムの運用時における留意点を紹介します。ポイントは、「電力消費」と「長期利用」です。

デバイスおよびサーバーの省電力設定と運用見直し

調達時に、消費電力の少ない機器を選ぶだけではなく、PCやサーバー、その他のデバイスには、「省電力設定」の可能なものがあります。

PCについては、スリープ機能やディスプレイの明るさ低減機能、省電力機能が利用できます。また、サーバーについても省電力機能がありますし、仮想化による稼働の効率化も可能です。サーバーの仮想化によって、柔軟にリソースの配分が行え、稼働率の低いサーバーの省電力化が可能です。

サーバーについての、もうひとつの施策は「クラウドサービスの利用」です。IaaS、PaaSでは、クラウド事業者が消費電力の最適化を行います。

適切なメンテナンスによる機器利用期間の延長

デバイスを「長期利用」するためには、定期的なメンテナンスが必要です。また、予期しない故障であっても、安易に買い替えるのではなく、修理することを第1の優先順位とします。

このことは、無駄な機器の増加を抑制するだけではなく、「廃棄物の抑制」に直結します。

ペーパーレス化とデジタルワークプレイスの推進

情報システムの目的そのものである「ペーパーレス化」は、コストの抑制効果だけではありません。ペーパーレス化によって、森林資源を守り、紙を製造するための電力消費を抑制し、加えて、プリンター利用の電力消費を低減します。

実は、デジタルワークプレイスでの業務も、温室効果ガス排出抑制に役立ちます。と言っても、PCの電力消費が抑制できるわけではありません。通勤で利用する交通事業者が排出する温室効果ガスについても、サプライチェーンの考え方からは、「雇用者の通勤」に係るものとして算定の範囲なのです。

フェーズ3【廃棄・リサイクル】:リスク管理と資源循環の両立

定期的なメンテナンスを行い、故障時に適切な対応を取っていても、デバイスに、いずれは、「廃棄」のタイミングがやってきます。ただ、ここにも、正しい廃棄の方法があります。ポイントは、「資源循環」ですが、正確には「リスク管理の下での資源循環」です。

データ消去の確実性と情報漏洩リスクの排除

PCについては、「資源循環」の側面から、3Rのうちの「リユース」「リサイクル」が考えられます。その際、忘れてはならないのが、「確実なデータ消去」です。

環境に配慮した行動として、「リユース」「リサイクル」を選んだとしても、そこに、自社の貴重なデータが残っていては、情報漏洩に繋がってしまいます。

データは、単なる消去や、ディスクのフォーマットという論理的な消去では、簡単に復旧できてしまいます。総務省が推奨する信頼できる消去方式で確実なデータ消去を実施することを忘れないようにしてください。

マテリアルリサイクルと適正処分のトレーサビリティ

情報機器、特にPCには、再資源化できる、金、銀、白金、鉄、銅、アルミという金属資源が多く利用されており、それらはリサイクルが可能です。また、ネオジム、ジスプロシウム、タンタル等のレアメタルも同様に、リサイクルの対象です。

レアメタル等を対象として、より効果的な回収方法の構築や、デジタルを用いたトレーサビリティを確保したリサイクル技術、リサイクルシステムの実証などが継続して行われており、経済産業省も法制化に向けて動いていますので、情シスとしては、注目しておく必要があります。

PCリユース(再生PC)市場への還元

PCが、サーキュラーエコノミーに貢献できる、もうひとつのポイントは、3Rのうちの「リユース」です。それは、「再生PC」という形をとって、次のユーザーに引き継がれ、廃棄されることなく「長期間使用」を実現します。

リユース業者を通じて市場に還流させた「再生PC」は、社会全体の環境負荷低減に貢献することになります。

SDGs対応を成功させるための情シスの体制づくり

ここまで、SDGs対応のための情シスの貢献ポイントを解説しました。

これらのポイントを、実務として進めるためには、体制作りが必要です。小さなことを積み重ねる業務ですので、ひとりだけが奮闘して成し得るものではありません。組織として継続的にSDGsに取り組むための仕組みづくりを考えましょう。

IT資産管理ツールの活用による可視化

SDGsに取り組むための仕組みづくりとして、活用が可能なツールは、「IT資産管理ツール」です。

これは、企業内にある全IT資産のリストで、元来は、構成管理、予算管理、セキュリティ管理等が利用目的ですが、このリストがあれば、SDGsの観点から、調達・利用・廃棄の全てのライフサイクルを管理することができます。また、これによって、無駄な調達や遊休資産をなくすことができ、その点からも、SDGsの実現に有効な可視化ツールだと言えます。

経営層・他部署を巻き込む社内報告のポイント

「SDGsが企業の社会的責任であり、成長の源泉であって、情シスもそこに貢献すべき」という論理は、情シスだけで盛り上がるテーマではありません。

経営層のサポートやアドバイスを得ることで、ユーザー部門の協力を得ることもできます。

そのためには、「SDGsに向けた情シスの取り組み」を目に見える形で経営層に伝え、その「進捗状況」と、成果としての「CO2削減効果」「コスト削減効果」を数値として、定期的に報告することで、全社的な活動にもつながるはずです。

まとめ

SDGs、ESG、CSR、3R等を考えると、情シスが、自社に、関連会社に、社会に、そして、国際的な環境保全に貢献できるポイントは多くあります。ひとつずつの積み重ねが、大きな効果を生むことを念頭に、IT資産管理を進めてください。