サーキュラーエコノミーとは

地球環境に配慮した新しい形の経済システムとして「サーキュラーエコノミー」に注目が集まっています。従来のリニアエコノミーや3Rエコノミーとの違い、類似のシェアリングエコノミーとの関連性・世界的な取り組み事例など、本記事ではこれらの点について解説を行います。

 

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(Circular Economy)とは、「円形/循環」を意味する”circle”の変形である”circular”と、「経済」を意味する”economy”を組み合わせた言葉で、日本語では「循環型経済」「循環経済」と訳されます。

従来の経済システムである「リニアエコノミー(直線型経済)」では、製品を製造する際に資源を一方通行的に使い捨てていき、その過程で大量の廃棄物を出していました。それとは対照的に、サーキュラーエコノミーでは可能な限り資源を循環させ、廃棄物の発生を必要最小限に抑えることが可能です。

OECD(経済協力開発機構)が2018年に出した報告によれば、地球上の原材料資源の消費は2060年までに2倍増加し、そのための更なる採掘・加工のために環境汚染や気候変動が引き起こされるとされています。大量生産・大量消費が止められない現代社会において、今後の地球環境、ひいては私たち自身と子どもたちの未来を守るためには、経済システムの形をリニア(直線型)からサーキュラー(循環型)へ変えていくことが求められています。

 

サーキュラーエコノミーと3Rの違い

サーキュラーエコノミーと類似する概念として「3R」が挙げられます。3RとはReduce, Reuse, Recycleの3単語の頭文字Rを並べた略称であり、環境省の定義によると、それぞれ以下のことを意味しています。

  • Reduce: 物を大切に使い、ごみを減らす
  • Reuse: 使える物は、繰り返し使う
  • Recycle: ごみを資源として再び利用する

ここからわかるのは、3Rの考え方では「ごみ」、つまり廃棄物の発生が前提とされており、それをいかに少なくしたり再資源化したりするかが問題とされていることです。そのため、従来のリニアエコノミーに比べれば廃棄物は減少するものの、環境への悪影響について根本部分での解決には至っていない点が課題でした。

その一方、サーキュラーエコノミーでは廃棄物の発生自体を抑制します。製品を製造する段階で既に資源としての回収や再利用が前提とされており、実現すれば廃棄物による環境汚染を限りなくゼロに近づけることが可能です。

地球の環境容量の限界を意味する「プラネタリーバウンダリー(Planetary Boundary)」が叫ばれる現在、3Rに比べて環境への負荷がより少ない概念モデルとして、サーキュラーエコノミーが注目を集めています。

 

シェアリングエコノミー

サーキュラーエコノミーと関係が深い経済モデルに「シェアリングエコノミー(Sharing Economy)」というものがあります。

シェア(共有)という字義通り、さまざまなモノ・コトを共有する新しい形のビジネスモデルであり、認知度の高いものとしては「民泊」「フリマアプリ」「カーシェア」などが挙げられます。

シェアリングエコノミーにおいて共有されるのは「空間・スキル・移動・お金・モノ」の5つの領域とされており、このうち「モノ」の共有はサーキュラーエコノミーの1つの形と捉えることができます。不要なモノを必要な人に譲る、必要なときだけ必要な分を共有する、これらの取り組みを行うことによって、消費行動における廃棄物の発生を抑制することが可能です。

また、サーキュラーエコノミーが企業から消費者への商品の流れであるBtoC (Business to Consumer)を主眼としているのに対し、シェアリングエコノミーでは消費者対消費者の商品やり取りであるCtoC (Consumer to Consumer)を基本としています。そのため、より広い視野での循環型経済社会を構築していくためには、これら2つの経済モデルを組み合わせていくことが重要です。

 

世界の取り組み状況

現在、サーキュラーエコノミーへの取り組みは世界的に広まっています。

ここでは、そのうちの代表的な事例を3つご紹介します。

 

サーキュラーエコノミー事例①:Adidas(アディダス)

世界的スポーツメーカーである独アディダス社は2019年、靴紐から靴底まで含めた全体が100%再生可能な素材「熱可塑性ウレタン(TPU)」で作られたスニーカーを発表しています。

これまで、履き込んでスニーカーが劣化した場合、ごみとして処分せざるを得ませんでした。しかし、こちらのスニーカーは特殊なリサイクル技術を使うことによって、履き潰したものであっても完全な新品に再生することができます。

※参考:アディダス、単一素材のスニーカー 100%再生可能に|日本経済新聞

 

サーキュラーエコノミー事例②:Apple(アップル)

IT業界を牽引する米アップル社では2019年、「Material Recovery Lab(素材再生研究所)」の開設を発表しました。同施設は、ロボティクスと機械学習を用いた探求を行うことで、製造業界全体が抱えるリサイクル問題のソリューションを模索することを目的としています。

また同年、100%再生可能な資源を使った製品生産に対する取り組み方針を記載した「環境報告書」もあわせて発表しており、地球に敬意を表したうえでの製品開発・製作を目指しています。

※参考:Apple、リサイクルプログラムを全世界で拡大|Newsroom

 

サーキュラーエコノミー事例③:フランス

サーキュラーエコノミーへの取り組みは、何も企業に限った話ではなく、国家での取り組みも盛んです。

フランスでは2020年に「循環経済法」という新しい法律が施行されました。同法では、2025年までにプラスチックのリサイクル率100%の達成を目標としており、それに伴いプラスチック製の使い捨てコップ・ストロー・レジ袋などの使用を禁止しています。

また、回収可能な資源については生産者による回収・リサイクルを義務付けており、これまで廃棄されていた衣料品や玩具、電子機器なども可能な限り再利用がなされるようになります。

※参考:循環経済法が2月に施行、循環経済型社会へ大きな一歩(フランス)|JETRO

 

まとめ

サーキュラーエコノミーは、廃棄物を出さずに資源を循環させる新しい形の経済モデルです。従来のリニアからサーキュラーへ経済モデルを切り替えることで、地球環境に配慮した持続可能な社会を作ることが可能となります。

有限である環境資源の消費を抑え、自分たち自身と次世代の未来をより良いものとするため、積極的な取り組みが求められます。

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