ワンビ創業の背景やTRUST DELETEの製品開発に込められた想いを、
創業者たちの言葉から語ります。
INTERVIEW WHTH CEO
CEOインタビュー
「リモートワイプを社会のインフラとして広めたい」
ワンビ株式会社 加藤 貴 CEOインタビュー
加藤 貴
ワンビ株式会社 代表取締役社長 CEO
略歴:
日本電子計算株式会社
株式会社リンク(現トレンドマイクロ株式会社)
サイボウズ株式会社
2006年5月 当社 創業
当社 代表取締役就任(現任)
「パソコンが紛失・盗難にあっても、重要データの情報漏洩は防止したい。」
そんな想いから、私たちワンビは、今から約20年前に遠隔からパソコンのデータを消去するという仕組みを実現しました。
今ではこの技術は“リモートワイプ”と呼ばれ、お客様のパソコンやスマートデバイスの情報漏洩を防止するために広く利用されています。
今回ワンビが創業されたきっかけから、軌道に乗るまでの道のり、そして製品に込めた想いまでワンビ代表のCEO加藤にインタビューを行い、ストーリーとしてまとめたコラムを作成しました。
普段なかなか知ることのない、ワンビの原点と想い。ぜひ、ご一読ください。
- パソコンを持ち出せない世界を変えたかった
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2005年、「個人情報保護法」が施行され、日本の企業社会は大きく変わった。
情報漏洩の社会的責任が重くなり、多くの企業が一斉にセキュリティ対策を強化。
ノートパソコンの持ち出しも制限された時代に、ワンビ株式会社は誕生した。
「ノートパソコンを外に持ち出すのは禁止、という動きがあっという間に広がりました。
でも、外で使うために作られたノートパソコンを持ち出せないのは、おかしいと思ったのです。」
ITの本質は、“いつでも、どこでも”使えること。
「だからこそ、外に持ち出しても情報漏洩のリスクを最小化できる仕組みが必要と考えたのです。」
当時の日本は世界有数のパソコン王国だった。
軽く、頑丈で、長く使える――高性能なノートPCで世界をリードしていた。
しかし”持ち出し禁止”という発想が、本来の価値を打ち消しつつあった。
「私は強い違和感を覚えました。パソコンを持ち出しても安全な世の中が作れるなら、すべてが変わるはず。そう信じて“パソコンのリモートワイプ”という仕組みを開発したのです。」
- まだパソコンでの“リモートワイプ“という言葉がなかった時代
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ワンビの創業メンバーは、コンピュータウイルス対策ソフトの開発に携わってきた仲間だった。
彼らが注目したのは、人間のミス(ヒューマンエラー)によるリスクだった。
「人は、どんなに注意していても、ミスをすることがあります。それならば、ミスをしても被害を最小限にできる仕組みを作ろう。
もしもパソコンが盗難・紛失しても、遠隔からデータを消せれば情報漏洩は防げる。
シンプルだけど革命的でした。ただ、その価値が理解されるまでには時間がかかりました。」
- TRUST DELETEが生まれた日
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当時、パソコンで”リモートワイプ”するということが認知されていなかった。
「それでも誰にもできない技術を自分たちで作るという信念を持っていました。企画書だけを手に、いろいろな企業を訪ね歩きました。まさに“絵に描いた餅”の段階でしたが、ある企業が熱意に共感し、先払いまでして発注してくれたのです。」
「私は20年経過した今でも、その恩は忘れません。この最初の契約が、ワンビを支える大きな原動力になりました。」
この契約をきっかけに、遠隔データ消去ソフト“TRUST DELETE(トラストデリート)”の開発が一気に進んだ。
しかし会社を設立してからの数年間は厳しかった。
「面白いね、でも予算が余ったら考えるよ」――そんな言葉を何度も聞いたのであった。
- “不可能”に挑み、世界初を目指した
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TRUST DELETEは少しずつ広まり、特にセキュリティ意識の高い金融業界や旅行代理店などに導入が進んだ。
しかし、常識的に不可能とされていた課題が残されていた。
それは“電源が入っていなければパソコンのデータは消せない”という課題だった。
「パソコンの電源が入っていなければ、OSも通信も動作しません。だから、リモートワイプを届けられないのです。」
それが当時の常識だった。
「でも発想を転換したのです。ソフトウェアだけでダメなら、ハードウェアも使えばいい。
パソコンの中にはBIOSや通信モジュールという独立した小さなOSがあります。私たちはそこに着目し、電源 OFFでも通信できる仕組みを考え始めたのです。」
この発想は、もともとウイルス技術を研究していたときに得たものだった。
悪用されている技術も、正しく使えば人を守れる――そう気づいた瞬間だった。
- 電源OFFからのリモートワイプ実現
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電源OFF からのリモートワイプ実現には、パソコンメーカーの協力が不可欠だった。
そのチャンスは、ある日突然やってきた。
「セミナー講演が終わったあとに、パナソニック(現:パナソニック コネクト)の担当者から声をかけられました。」
お客様から”電源を切った状態からでもデータを消したい”という要望があるんですが…」と。
世界的メーカーとベンチャー企業の出会いを機に共同開発が始まり、ついに電源OFF からでもデータ消去を実現できる”TRUST DELETE Biz パナソニック版”が誕生した。
- 私たちのセキュリティソリューションがインフラになる
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リモートワイプは”あれば安心”というレベルを超え、”ないと困る”存在になりつつある。
ワンビが目指すのは、社会インフラとしてのリモートワイプの定着である。
「私たちが目指すのは、”リモートワイプ”を社会インフラにすることです。どんな建物にも警備があるように、どんなノートPCにもリモートワイプがあるのが当たり前にしたい。
日本の技術は世界に通用します。ハードウェアとソフトウェアが連携した技術は世界トップクラスです。今後もPCメーカーや通信キャリアと連携し、ワンビの技術を世界へ広げていきます。」
- 守るべきものは、企業ではなく「人」
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情報漏洩は、人の信頼を奪い、責任を背負わせ、時には職場を離れることにもつながる。
その影響は本人だけでなく、家族にも及ぶ。
「守るべきものは企業ではなく“人”です。
出張や現場で働く人ほどパソコンの紛失・盗難リスクにさらされます。
万が一のときに一番つらい思いをするのは、その本人。
しかし、私たちが守りたいのは“人”であり、その家族です。」
この想いは、ワンビの製品づくり・営業姿勢・企業理念のすべてに通じている。
「テレワークやハイブリッドワークなど働き方は変化しています。必要なのは”信用されて任せられる”セキュリティ対策です。」
失敗しても守ってくれるテクノロジー。
それが、働く人の安心を支え、生産性を高め、そして社会を強くしていく。
“TRUST DELETE”は、その思いを形にした製品である。
INTERVIEW WITH CTO
CTOインタビュー
CTOが語るTRUST DELETEの20年 ― パソコンの情報漏洩に備える最後の砦
板井 清司
ワンビ株式会社 取締役 CTO
略歴:
トレンドマイクロ株式会社
株式会社ライブドア
2006年5月 当社 創業
当社 取締役就任(現任)
あなたのPCが盗まれた――その瞬間、何ができるだろうか。
20年前、まだ「リモートワイプ」という言葉すら存在しなかった時代。
誰も考えなかった“遠隔からのデータ消去”という発想を形にし、いまやパソコン紛失時などの業界標準となったテクノロジー――それがリモートワイプです。
その黎明期から開発の最前線に立ち続けてきた、ワンビ株式会社 技術トップ(CTO)の板井が語るのは、偶然の出会いから生まれた革新的な機能の裏話、そして20年間貫き通してきた“特化”の哲学。
単なる製品開発の歴史ではなく、「情報漏洩を守る」ことの本質に迫る挑戦の歴史です。
今回は、ワンビ創業のきっかけから製品が軌道に乗るまでの道のり、そしてTRUST DELETEに込めた想いまで――CTO板井へのインタビューを通じて、そのストーリーをコラムとしてまとめました。
普段はなかなか知ることのできない、ワンビの原点と開発の想いを、ぜひご一読ください。
- 誰も知らなかった「遠隔データ消去」という発想
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20年前、まだ「リモートワイプ」という言葉すら存在しなかった時代。
多くの企業は「持ち出したパソコンを紛失しないこと」だけに注力していた。
しかし、紛失や盗難を完全に防ぐことは不可能である。
ワンビ株式会社 CTOの板井は、当時をこう振り返る。
「パソコンを持ち出せば紛失・盗難リスクが生まれる。当たり前のことです。ならば、万が一に備えて情報を消す仕組みを用意すればいいと思ったのです。」
この発想がTRUST DELETE 誕生の出発点だった。
「日本ではPCのデータをリモートから消去するという発想が存在しなかった。だからこそ、挑戦する価値があったんです。」
この新しい発想を現実にするため、創業メンバーたちはゼロから道を切り拓いていった。
- 世の中にない市場を切り拓く
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ワンビ株式会社の法人化は、ある意味で偶然の産物だった。
日本では「パソコンを盗まれたら遠隔でデータを消去する」という発想がほとんど存在せず、市場の認知もゼロに近かった。
「なぜデータを消す必要があるのか──そこから説明しなければなりませんでした。最初は“セキュリティ教育”そのものでした。」
営業活動は製品の説明というよりも啓蒙活動に近いものだったが、ある企業に製品の構想を見せたとき、すべてが変わった。
「構想を見せたら『うちで販売したいから、法人格を取ってほしい』と言われたんです。」
提示したアイデアは、のちのTRUST DELETE の原型となるものだった。
未知の領域こそ、挑戦する価値があった。
- 技術が先か、市場が先か
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TRUST DELETE の特徴の一つが、クライアント端末が定期的にサーバーに通信をして命令を取得する「ポーリング方式」だ。
これは、板井がかつてウイルス対策製品の開発に携わった経験から着想を得た。
「パターンファイル更新の仕組みを応用すれば、リモートワイプも確実に実行できると考えました。サーバーから命令する効果的な方法は当時なく、クライアント端末が自らポーリングする方が安定性は高いんです。」
その後も TRUST DELETE は進化を続けた。
インターネット常時接続が一般的でなかった時代に開発された「タイマー消去」は、クライアント端末がサーバーと一定期間未接続状態が経過すると、端末で自動的にデータを消去する仕組みだ。
これは顧客要望ではなく、開発チームの先読みから生まれた。
リモートワイプ命令が端末に届かないオフライン環境下でも、情報漏洩を防止できるようになった。
さらに、BIOSレベルからデータを消去してOSまるごとデータ消去を行う「フルワイプ」や、端末利用を強力に無効化する「HIDロック」など、通常のOSロックとは異なる革新的な機能も登場した。
これらはすべて、ニーズよりも先に技術が進化を導いた結果である。
「ニーズを待っていたら遅い。技術的に実現可能なものを先に形にして、必要になったときにはすぐ提供できる状態にしておくのです。」
- 「偶然」と「直感」から生まれたブレイクスルー
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TRUST DELETE Prime に搭載されている「フルワイプ」は、端末のディスク上のOSを完全に消去できる技術である。
きっかけは、板井が展示会で偶然見かけた技術だった。
「BIOSと置き換えて実行することで、OSに依存せずストレージを消去できる技術を見つけたのです。見た瞬間にTRUST DELETEに組み込めると直感しました。」
すぐに試作を開始し、数週間後にはプロトタイプが完成。社内テストで実用性を確認した。
「偶然の出会いがなければ実現していなかった。でも、偶然を掴めるのは、その可能性を見抜く直感と、即行動できる機動力があるからだと思います。」
- 専門性に特化するという戦略
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ワンビが20年間貫いてきたのは「特化」という哲学だ。
TRUST DELETEは、セキュリティ製品市場全体をカバーするわけではない。
端末の紛失・盗難時における情報漏洩防止という極めて限定的な領域に焦点を当てている。
「大手と同じ領域に挑めば、資本力で必ず負けます。だからこそ、他社が手を出さないニッチ領域を徹底的に掘り下げるのです。」
この集中戦略により、TRUST DELETEは独自の地位を築いた。
TRUST DELETEは集中的に製品開発を進めることで製品信頼性を高めた結果、現在では大手メーカーや自治体、金融機関などの重要分野にも導入されている。
- 開発組織の自律と信頼の文化
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ワンビの開発組織は決して大きくない。むしろ、あえて小規模体制を選んできた。
「少人数だからこそ、一人ひとりの影響力が大きい。その責任感が組織を強くしてくれるんです。」
板井は細かい指示を出さず、チームには大きな方向性とゴールだけを共有する。
「人に言われたことだけをこなしても、良いものは作れません。自分で考え、自分で動くことで、本当に価値あるものが生まれるんです。」
また、各エンジニアの得意分野を最大限に活かすことを重視している。
ハードウェアに強いメンバーはハードウェア制御、OS・ネットワークに強いメンバーはサーバー設計を担当など、全員が専門性を武器に連携するチームスタイルだ。
こうした自律型文化こそが、TRUST DELETEの高い信頼性を支える土台となっている。
- TRUST DELETEに込めた想い
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TRUST DELETEは“有事に備える最後の砦”だ。
「TRUST DELETEは、生産性を高めるためのツールではありません。
私たちが提供しているのは、事故が起きたときに“情報漏洩を防止できる”唯一の手段であり、組織やそこで働く人たちを守る“砦”です。」
近年では、情報漏洩や端末紛失が企業経営に直結するリスクとして認識されるようになり、一度の事故で数千万円~数億円規模の損失が発生するケースも珍しくない。
「20年前と比べ、法人のリスク管理意識は格段に高まりました。
リスク管理の意識が高まらなければ、ワンビも20年間続けられなかったはずです。」
安心を届ける責任の重さを感じながら、板井は語る。
「私たちの使命は、お客様がPCを安心して使える環境を提供することです。
TRUST DELETEがその一助となるなら本当に嬉しい。これからも一社でも多くの法人に、この安心を届けていきます。」
免責事項
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